自己啓発本の罠について
僕はいわゆる自己啓発本というものが好きだった。「だった」と書いたように、今は好きではない。とても警戒している。全く読まないわけではないが、読む時は最大限疑って読むように心がけている。それは単純な罠に気づいたからだ。
自己啓発本を読んだだけでは、人は変わらない
当たり前のことだけれど、この罠は無自覚にハマっている可能性がある。その危険は知るべきだ。
これは、それなりに読んだからこそ言いたい、一つの意見である。戯言だけれど、読んでいただければと思う。
自己啓発本をざっくり分類してみると
書店のビジネス書コーナーに行くと、以下の様な本がたくさん並んでいる。
- 簡単系自己啓発本
- 「▲▲にお悩みの人も、○○するだけで、■■になれる!」といった類
- 成功系自己啓発本
- 「俺は昔▲▲だったけど、○○をしたから、■■になったよ!」といった類
昔もたくさんあったが、最近は特に多い印象を受ける。現代人のニーズの反映であり、いかに多くの人が苦しんでいるかがよく表れている。別に本だけの話ではなく、ネット上にもこういった情報が広がっており、目にしていることだろう。
ベストセラーにもなるし、人気のエントリーにもあがる。それだけ世の中の人が求めているのだろう。皆、楽して儲けたいし、ザッカーバーグになりたいだろうし、あるいは痩せたいだろう。
こういった本は、非常によく出来ている。とにかく刺激的なのだ。
前述の「簡単系自己啓発本」であれば、抱える問題がいかに深刻な問題であるかを強調し、その状態を変えないと、いかに危険かを訴えてくる。そして、その状態を簡単に変えられる方法を紹介してくれる。
また「成功系自己啓発本」であれば、著者が過去いかに怠惰な生活をしてきたかを紹介し、「別に自分は天才じゃない」とアピールをし、そんな自分でもこれをコツコツと成功したんだと。そして今は最高にハッピーな生活をしていることを紹介してくれる。
こういった話を読んで、何も思わない人はいない。「変えたい」人にとって、「変わった」人の話というのは得てして魅力的にうつる。それを最大限に魅力的にパッケージしたもの、それが自己啓発本なのだと思っている。
しかし、読むだけでそうなれるものか。否、なれるはずがない。
自己啓発本を読んで、得られるのは気分の高揚のみ
「こんな自分でも変われるんだ!成功できるんだ!」と思うことは、読者にとって希望である。「変えたい」人が「変えられる」と思えるのだから。それを本一冊読んだだけで得られるのであれば確かによいもののように思える。
だがその希望は、あくまで思わされた理想である。理想をイメージするだけで、変われるのならば、これだけ自己啓発本が大量に消費されることはないだろう。
僕含め自己啓発本を読んだほとんどの人は、読んで満足してしまっている。行動に表れていない。
いや行動はするかもしれない。しかし続かない。なぜなら本によって得た刺激が持続しないからである。刺激的な内容を受け、高ぶる精神は気持ちがいい。何でも出来る気がする。けれど、果たしてそれは続くのか。所詮は感情。ゆえに続かない。
そもそもそこで読んでもった夢や理想は、本当の夢や理想なのか。本当にやりたいことなのだろうか。日が経ち、ふと冷静に考えると違うとなる。そうすると行動は止まる。
そして足りなくなった刺激を求めて、新たな自己啓発本に手を出すのだ。そして全く異なる思考と手法をインストールするのである。
故に何も変わらない。結局変わっていない自分に葛藤する。そして、「変わりたい」と思い、書店に赴くのだ。
これは多くの現代人が抱える一種の問題であり、悲劇なのではないだろうか。
まとめ:行動せねば変わらない
自己啓発本とは鎮痛剤であり、精神高揚剤である。根本的解決をしてくれるものではない。本を読んだだけですべてが解決できるほど、世の中は甘くはない。
もちろん適切なタイミングに読む、自己啓発本は薬ともなる。自己啓発本の名著と言われるものは素晴らしいものだ。
しかし、多用すると抜け出せない沼にはまる。常に自己啓発本を求めているようでは危険な精神状態にあると自覚せねばならない。
大事なのは、読んで何をしたか、である。人を変えるのは、行動だけだ。行動せずして、人の人生も生活も変わらない。
自己啓発本が直接的に悪いのではない。読んで満足してしまう己の性に問題を感じなければ、変わらない。本当に自戒したい。
「いやいや、そんなことないよ」という声もあろうし、「今更いってんじゃねーよ」という声もあるだろう。
何にしろ、異常なまでに出版される自己啓発本やそれに類するブログ記事たちは、いかに多くの人が悩み、求めているかの表れだ。しかし、自己啓発本はその根本的解決になりえるのだろうか。
僕は一時的な鎮痛剤にしかなりえないと思っていて、それに変わる”何か”が求められていると思う。これこそ真剣に議論されるべきテーマなのではないだろうか。
引き続き、考えていきたいと思う。
参考(追記:2013/08/29 13:23)
以下は極論が多いけれど、なるほどなと思うところもまた多い