リテラシーラボラトリ

リテラシーを考える

増え続けるライフハック情報に踊らされる悲劇のライフハッカーたち

 ライフハックの情報が、逆に生活に混乱を与えている。

最近そう思うことが多くなってきた。ライフハックとは

効率良く仕事をこなし、高い生産性を上げ、人生のクオリティを高めるための工夫。

である(はてなキーワードより)。似たような言葉に自己啓発もある。ここで言葉の定義云々を語るつもりはないが、要は「人生・生活の質の向上のための工夫」と考えてもらえれば、ここでは差し支えない。

 このライフハック・自己啓発系の本やネット記事を好んで読む人は実に多い。本のランキングやネットメディアで取り上げられる記事を読むと、その傾向が顕著に見える。「人生をもっと楽しむ50のコツ」とか「寝る前にやるべきたった3つのこと」とか(適当)そういった情報は、常に発信されている。気になったタイトルにひかれ、思わず試した経験は誰しもあるはずだ。今はライフハックの情報は随分と得られやすくなった。またブログやSNSにより個人でも発信がしやすくなった。そのため、日々大なり小なりライフハックの情報が増えて続けている

 情報が得られる機会が増えたことは、喜ばしいことのように思える。しかし、ここに大きな問題が存在する。それは脳ミソのリソースを遥かに上回った量の情報を得てしまう「ライフハック情報過多」だ。無料でそれでいて、とても効果が高く見える情報だからこそ、過剰に読み込んでしまうのである。無害、どころか有益なライフハックの情報たち、しかしそれ故にたちが悪いと言える。

 ここで、あるライフハック好きの男の話を紹介したい。

 Web業界に勤める20代中ごろの男A。A君はライフハックのネタを知るのが大好きだった。大学時代から関心は強かったが、仕事を始めてからは一層熱心になっていた。ある時A君が近所の本屋に行ったとき、彼の目をひいたのが、ライフハック・自己啓発本だった。仕事で成功したいA君が、仕事を成功するコツを書いた本を手にとった瞬間は、まさに需要と供給がマッチした瞬間だった。そして彼は勝間和代の本など有名どころ含め、手当たり次第ライフハック本を購入し、読み込んだ。そして仕事でも生活でも少しずつ実践していった。すると仕事の効率が以前より上がり、目に見える形で成果が出てきた。生活上もメリハリが生まれ、充実してきた。効果がでたと思った彼は、書籍はもちろん、ネット上で上がっているライフハック系の情報をかき集め、最新情報を取り入れるようにした。ここまでは順調だった。


 効率は確かに上がった。他の人が20分かかっていたPCの作業も、彼であれば10分いや速い時は5分で終えることができた。常に効率を考える彼に作業での効率という点において勝てる人は少なかった。しかし、作業に入るまでに異常な時間をかけていた。彼は迷うのに多くの時間を潰していた。このケースの場合、何を使うべきか、どれでやったら一番効率的かを考えていたのだ。彼はライフハックの本やネットで得た情報から、たくさんの方法とツールを知っていた。そしてすべてダウンロードし、購入し、実践したのである。それにより多くの手段と知識を得た。しかし逆に言えば選択肢が増えすぎてしまった。経験がほとんどない状態で、選択肢が増えすぎた状態。これは一種の悲劇である。結果「どれを使ったら一番効率的か」を考えるのに時間を食う。単純作業であればそこまで迷うことはないのだが、複雑なことになると、とんでもない時間がかかる。結局作業は効率であっても、全体でみると極めて非効率的な中途半端な人間となったのである。思うような成果が上がらず、迷う時間が増えていくことに焦りを覚えた彼は、現状を解決する情報を求めて、再び本屋とネットに向かった…。(以下、エンドレス)

 多少脚色はあるものの、この「自称ライフハッカー(笑)」は僕のことだ。本屋に行ったら、まずビジネス書のコーナーに行って、その手の新作をチェックする。またネットでははてブ人気エントリーチェックはかかさない。そんな典型的なライフハック好き人間が僕である。そして、こういった悩みを抱えている人は私だけではないはず。いわゆるライフハック好きにはこういう被害者は多い。しかし、これが問題と気づきにくいのだ。今抱えている課題が解決できないのは、自分がまだ知識を得ていないからだと思う。そのためまた情報収集エンドレスにはまるのである。

 そしてまたライフハックの情報はキリがない。デバイスが進化すればガラリと変わるし、アプリが新登場したらこれまでのツールが不要になったりすることもある。そしてITについてはこの動きは毎日毎時行われている。その最新情報と使用レビューを有名ブロガーたちがアウトプットし、それを僕らが見ているわけだ。この最新情報は求めても求めても終わりはない。そして何より職業柄でもあるいは使う人の性格によって、良し悪しの感想は異なる。恐ろしいのはライフハッカーのプロたちでも言ってることがコロコロ変わるのだ。だから読者もつられて混乱していく。プロブロガーは意図してか意図せずしてか、ただ最新情報を垂れ流しにして、PVを稼いでいるのである。

 そして最終的には「自分に最適なライフハックが分からない」という悲劇にいきつく。ライフハック系の知識や情報は、あまりにも数が多い。今の自分に必要なもの以上に情報を受け過ぎた、いわば情報過多状態に陥ると、このケースになる。ライフハッカーは得てして、数多くの知識を得ることが目的となりがちだ。だが目的はそこではない。生活の質を高めることこそが目的であることを改めて知らなければならない。つまり大事なのは、自分に合ったライフハックを見つけることである。しかし、数えきれない情報の海に溺れている人間にとっては、口で言うほど簡単ではない問題だ。

求められる正しいライフハックの形

 この問題の解決の一つとして僕が考えているのは、飛び交う「ライフハック」という言葉と情報を体系的にまとめることである。ライフハックを情報として考えるのではなく、一つの学問として昇華させる。いわば「ライフハック学」である。想定されるまとめるべき項目は、以下のものが考えられる。

  1. ライフハック」とは何か
  2. ライフハックの分類
  3. ライフハックツールの分類
  4. ライフハッカーのタイプ分け
  5. 最適なライフハックとは何か

これらを、あらゆるプロフェッショナルたちにインタビューをして研究するのが一番いい。そこから抽出された単なる知識ではなく、経験に基づかれたエッセンス。それらを体系立ててまとめるのだ。これまでバラバラに飛び散っていた情報を一つに集約する。現状のライフハックのWeb系のまとめをみるときちんとまとめられたものは少ない。本でも僕は見たことはない。上手くまとまっていたとしてもそれは一部でしかない。ともかくここらが体系的にきちんと分けて話している人を僕は知らない。だからこそ、ライフハックを体系だてて教えて欲しい、そういうニーズが潜在的にあるように思えてならない。

 ということでライフハック情報バカの僕が、ライフハックを改めてまとめてみたいと思った次第です。本当は裏でこっそりまとめて、体系立ててから別HPでアップする予定でした。が、僕個人の中で体系だてるといってもたかが知れてますので、恥を覚悟でさらしてみたわけです。意見でも何でもいただければ幸いです。

 生活を変えるライフハックにあれほど読み手がいるならば、自分に一番最適なライフハックを知りたくない人はいない。そんな本当のライフハックを、まず自分を通して探していきたいと思います。引き続き宜しくお願い致します。

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