リテラシーラボラトリ

リテラシーを考える

大学生のこども化と、社会人3年目の憂鬱について

最近知り合いから少し興味深い話を聞きました。まあ、半分は他人事のようで、もう半分は自分のことだったりします。

大学生と、20代の社会人と、人生の先輩方に読んでいただければ幸いです。

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photo by Pete Labrozzi

大学生のこども化

いま大学生が非常に「こども」っぽくなっているという話があります。よくある話としては

子供が受験や就活、また一人暮らしができるのか、心配な気持ちは分かりますが、少し過剰な傾向にあります。大学生すべてではないでしょうが、親の過保護が目立ちます。

実際に大学生と話す機会がよくありますが、感想としては、「素直でいい子」が多いんですよね。これはいいようで、悪い。「素直でいい子」の本質は、自分で考えることをしないということです。特に自分の人生を考えていないのではないでしょうか。もし考えているのであれば、受験や就活という自分の人生を左右する問題を、両親にお任せするわけはないでしょう。

ハチナナ世代のぼくも「こども」なのでしょうが、さらに「こども化」が進んでいるというのが現状だと思います。


人口ピラミッドから見る

「これだから最近の若者は…」では、ただのオッサン論になってしまうので、ここでデータをもってきましょう。統計局の人口ピラミッドです。2000年と2010年を比較してみましょう。20歳前後を御覧ください。


ざっくり80万人が60万人。今の大学生って明らかに数が減っている。少子化で減る一方です。

対して大学の数はどうか。これがおかしなことに、増えている。在籍者数も増えています。


少子化で減る一方なのに、大学の数は増え、大学生になる人は多い。供給過多ですね。

そして、一家族あたりの子供の数が減り、その分養育費が増し、大学に行かせる親が増えたのでしょう。「とりあえず大学には行っておけ」の風潮があります。


  • グラフでみる世帯の状況(平成24年)厚生労働省 より引用

大学生になることすら難しかった昔と、大学生になりやすい今を比べれば、競争が少ない分、明らかに挫折の経験は少ない。トントン拍子で大学生になれてしまう。親に言われるままに、大学へと入学してしまう。

自らの人生に何ら疑問を抱かず、ここまでいけてしまう恵まれた世代とも言えますが、同時に考えることをしない子供がそのまま大学生になってしまったと言えます。

子供化した大学生は、社会に出て行き詰まる

さて、では彼らはそのままスイスイと世の中を渡っていけるかというとそうではありません。必ず行き詰まります。

大学時代も大なり小なりあったでしょうが、大学に入る前も入った後もさほど大変ではありません。厳しい大学なら別ですが、ほとんどの大学は卒業するのも容易です。それなりに授業に出席して、それなりのレポートを提出すれば卒業できてしまうわけですから。

そして、ぶつかる大きな壁、それは就活です。自分が一体何になるのか、何がしたいのか、否が応でも考えさせられます。いざ就活といっても何をしていいのか、分からない。それを見た親が就職合同説明会に同伴するのも頷けてしまいます。

そして、仮に上手いこと就職できたとしても、社会人になってからの3年間ほどで必ず行き詰まります。さすがに親の介入も会社では通用しません。(まれに介入するモンスターペアレントがいますが、それはおいておいて)

ここで大きな挫折を味わいます。初めて自分の人生を考えるのです。

「このままこの会社でずっと働き続けるのだろうか」
「これが本当に自分のやりたいことなのだろうか」
と言った具合に。

僕も悩んでいる方ですが、同年代や年下を見渡すと、つまづいている人が多い印象があります。就職浪人、早期での転職、これならまだいい。フリーターになる人、うまく転職ができず、精神的に病んでしまう人。幸いにも周りにはいないですが、自らの命を絶つ人もいます。

メディアは若い成功者ばかりを取り上げますが、その裏におびただしい数の挫折を味わう人がいることを忘れてはなりません。

「おとな」になりきれず、もがく「こども」は多いのです。今後そういう傾向が強くなると思われます。

まとめ:感情論に走らない、焦らない、ゆっくりと向きあおう

この話を聞いてストンと胸に落ちました。実感として思っていたことが、データから説明してもらったので。

「こどもっぽいからダメだ」だとか「これだからゆとり世代は」という言論に、意味はないことも言えます。なるべくしてなったわけではなく、家族や教育環境などの社会的要因がこうさせたわけですから。いいも悪いもありません。まずは現状を認識しなければなりません。こういう言葉を言っているなら、控えるべきだし、聞いたのなら流しましょう。そこから生まれるものは世代間のつまらない争いだけです。

「『こども』なら『おとな』になれ!」という感情論では、現状を変えられません。まずは冷静にこういう要因ゆえ、こういった気質があることを知ってもらうのがよさそうです。

  • 年上の人なら、若い人の状況を少しでも知る参考に
  • 同年代なら、あなたの悩みは少しもおかしくはないことを
  • これから大学生や社会人になる人なら、これから壁にぶつかるから、その心の準備を

そういえば、最近こんな本を読みました。

社会人思春期の歩き方

社会人思春期の歩き方

「社会人思春期」という表現がいいな、と思って手を伸ばしました。前向きな気持ちにしてくれる良本です。「こども」の僕らは思春期のときのように多感でいいんです。それは社会人であっても、大学生であっても。

だから躓いて泣きたくなるようなことばかりだけれど、それでいい。人生を考えることに、遅いも早いもない。「やりたいこと」や「夢」を煽る周囲やメディアに振り回されるけれども、まずは自分と向きあい、対話したい。

そして、ゆっくりでいいから「おとな」になっていきましょう。

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